レベルの高い食事を出しているのにもかかわらず、お値段は良心的で応対もいいとくれば、いいレストランに決まっている。しかし、そういったレストランに限って予約が取りにくかったりする。Casa VINITALIA は名店として名高い Aromafresca の原田シェフが新たに南麻布に作ったレストラン。まさか、当日電話を入れて予約が取れるとは思っていなかった。だが、時に幸運の女神は気まぐれなほほえみを見せることがある。午後7時に電話を入れて、その20分後には店の中にいた。

田渕マネジャーの気持ちいい勧めに応じてぼくたちが選んだ
ワインは Cason 1998 という赤ワイン。メルローが多めと聞いてすぐに決めた。
テイスティングのためについでもらって、グラスの中を上ってくるフルーティな
アロマにうれしい驚き。イタリアワインであることをアピールする酸味がすぐに甘くなった時、驚きは確信に変わった。これはいいワインだ。
ぼくたちが頼んだのは二人から
注文ができる Menu Degustazione というコース。前菜が二つあるが、一つめは決まっている。二つめはそれぞれから好きなものを選ぶことができる。その後、
パスタかお米を選び、魚か肉を選ぶ。最後に、量を自分で決めるパスタが登場してメインは終了し、
デザートに座を譲るという豪華な展開だが、お値段はわずか5,000円ほど。
もっとも、ワインが4,000円くらいから40,000円を超えるようなものもあり、二人で食べたときには飲むワインによってお値段は最終的には動くだろう。

最初に登場したのは、「バーニャカウダ」。
彼女によると、イタリア料理としてはとてもポピュラーな一品で、普通はオリーブオイルをベースにしたソースで味わうのだが、ゴルゴンゾーラにクルミを混ぜたところが面白かった。
写真のように数多くの新鮮な野菜を楽しむことができて満足。
仕事帰りに疲れをかかえてお店にやってきたお客さんは、この一品でまずはリフレッシュができるだろう。

二品目は、それぞれが好きに選ぶ前菜。彼女は、アオイカのカルパッチョ、ウニ添え。
写真に写っている緑は
健康食品として名高い海ブドウ。
濃厚なウニの味とさわやかなアオイカのカルパッチョ、さらにはこりこりした海ブドウの食感が気持ちいい。彼女のメニューの方がよかったかなと正直思ったりもした。

しかし、ぼくのメニューだって負けてはいない。
三種類の生ハムとラードをルッコラで楽しむという一品。大の生ハム好きのぼくにとっては、これほどの贅沢はない。
赤くて肉厚のイベリコ豚の生ハムが最高においしくて、ここで帰れと言われても満足だと思ったが、後の品が出てくるにつれて、それは違うと思った。

パスタにするか、リゾットにするか。三品目は迷った。しかし、せっかくなら激しそうなものにしようという直感と、田渕さんの助言とで、三種類のカニのリゾットをいただいた。それが外れだったか正解だったかは写真だけでも分かるかもしれない。
日本人はとかくカニに弱いから、「カニづくし」というイメージにすぐに傾いてしまうが、実際に満足するかどうかは別物。その点、このリゾットは実においしかった。カニもリゾットも、そして、そのコンビネーションも楽しめる贅沢さ。通常のコースに追加料金を払って食べるだけの価値がある。

四品目も迷った。赤ワインを飲むのなら、魚よりは肉の方が正統だ。だが、田崎さんはこだわらなくていいとおっしゃっている。田渕さんに聞いてみると、もちろん、肉の方が赤ワインとは合うだろうが、魚もおいしいと。
もう一度よく考えてみた。Cason 1998 はとてもすっきりしていて、まるで、杉のように立つイメージだ。おそらく、魚でもさほど外れにはなるまい。その上、オコゼを食べてみたかった。
写真には乗せなかったが驚いたのは料理の給仕の仕方。小さな鍋の中に大量のワカメを入れて、その中にオコゼが二切れ入っている。ワカメは塩がきついから食べない方がよいと勧められた。こっそり食べてみたが、やはり、その通りだった。
オコゼの身は淡泊でもあぶらっこくもなく、うまみとすっきりが調和した不思議な味だった。それが、お皿の上にあらかじめ盛りつけられた香草とぴったり。香草にはあらかじめ柑橘系のソースがかかっていて、それがオコゼの味を引き立たせる。あっという間にオコゼはなくなってしまった。
オコゼのあたりでワインが切れてしまったので、グラスで追加をお願いした。Poliziano 1996 というワイン。最初のワインよりはもう少し濃いのを期待したが、思ったよりは濃くなかった。もっとも、こちらも酸味が強く、すっきりした味でおいしいワインだった。

五品目はパスタ。30g、60g、100gと量を選べるだけでなく、ソースも選べる。今から思うと、お肉のソースをお願いすればよかったが、
トマト好きなぼくは、アンチョビという言葉にも惹かれてトマトソースをそれぞれ60gでお願いした。
シンプルなパスタは危険だ。だましがきかないから、シェフの腕がそのまま反映される。給仕されたパスタを見た瞬間、脳裏に浮かんだ文字は「!」。これはおいしいと直感した。面白いことに、こういう直感はどんな人でも当たる。気づけばあっという間にパスタも食べ終えてしまった。
彼女はキャラメルのババロワ、ぼくはリンゴの焼いたものをお願いして、
コーヒーをいただいておなか一杯。店員が店を出るところまで丁寧に送ってくれたのもうれしかった。お店を出たらちょうど道がぬれていたが雨は降っていなかった。
時計は11時を回っていた。